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無題
タイトル↑、つけようはいくらでもあるのですが
つけたくない気分なので「無題」でお送りします。カテゴリもなし。

この時期(←論文執筆中)に読んではいけないものを読んでしまいました。

きみはソーカル事件を知っているか?

「いいえ、知りません。」

ということで、軽い気持ちで読んでみたわけなのですが、

うっへぇ...がちょーん...
こわい。こわくなってしまいました。
知らない方がよかったかも。

言うまでもなく私は、ソーカルたちに直接批判されている
「哲学・文学的知識人」には含まれませんし(←言うまでもなさすぎ)
現在執筆中の論文にこの人たちの言説をふんだんに盛り込んでいるわけでもなく
それどころか、ほとんど読んだことがないのですが、
それでも十分こわがれます、これは。

読めばこの批判の正しさが確認されるであろう、という確信に近い予測、
この批判はある意味で自分のやっていること
(もしくはやりかねないこと)にも向けられているものだという自覚、
そして、それが実際に自分に向けられた場合に
おそらく再反論できないであろうという予測と自覚の入り混じったもの...
これだけそろえばさすがの(?)私もこわがりますよ。

私は、自分に向けられた(もしくは向けられうる)「正しい批判」こそ
自分が成長するための最高の栄養素だと思っていますし
実際、的を得た異論や反論には嬉々として飛びついて
再反論するなり、できないなら反省して自説を改良するなり、
それなりに成長もしてきたつもりです。

が、今回は「正しい批判」だと思われるにも関わらず
一瞬、飛びつくのをためらい、「逃げる」ことを考えそうになりました。

なぜなら、この「批判」を糧にし、自説をこれに耐えうるよう
グレードアップするのに、いったいどれだけの時間がかかることか、
ちょっと想像できないからです。相当かかると思います。
自分の生きているうちには成し得ないかも知れない。

ということで大至急!私より長生きしてくれるお弟子さん大募集!

というのはもちろん冗談ですよ、でも、
「知の欺瞞」だとか「ファッショナブル・ナンセンス」だとかの
レッテルをひとまず自分で自分に貼り付けて、
結局それをはがせないまま死んでしまうなんてつらすぎる。
いくらそれが「思想そのものを批判したわけではない」のだとしても、
というかむしろ、それゆえに一層、その屈辱が際立つだろうと私は思います。

もっとも、私なんぞの博士論文の審査では
ソーカルのような痛烈な批判は出てこないとほぼ断言できます。
誤解されると困るので、念のために書いておくと、これは決して
個々の審査員の先生方をバカにしているのではありません。
第一に、ワタクシめの論文など、ソーカルらの批判以前に
批判するところが山ほどあるだろう、ということと(苦笑)
第二に、こんな批判を(できるにしても)実際にする人は滅多にいない、
あるいは(できる人ならなおさら)するべき場を見極めるであろう、ということです。

なので学位ももらえるだろうと思いますが、
しかし、そういう問題ではない。そういう問題では全然ない。
「こんな論文で学位を与えて恥ずかしくないのですか!」
と叫びたい自分を私はその場で抑えられるだろうか。
いや、まぁ、たぶん、というか間違いなく
余裕で抑えられるんですけど、でも、叫びたいのはホントです。嗚呼。

...と、なんかだんだん、誰に向かって語ってるのか、
不思議な口調になってきてしまいましたが、
最後に一つ、自分に言い聞かせたい。

「知の欺瞞」を自覚していながら
それをあえて無視して生きていくつらさに比べたら
自説を批判されることなど、それがどんなに痛烈であっても、
なんでもないことだよ、と。

そんなことを言えるのは、私がまだなんにも
(お金も、権力も、名声も)持っていないからかも知れませんけど、
そういう意味では(冒頭では「知らない方がよかったかも」と書いたけれども)
例えば5年後にはじめて読むことになるよりは今読んでおいてよかったと思う。
(まぁ、5年経っても私のお金や権力や名声の持ち分(?)は
今とそれほど変わらない可能性が高いですが。)

と、とりあえず、持ち前のポジティヴ思考で持ち直し、
Amazonのカートに「知の欺瞞」と「アナロジーの罠」を入れて
論文の方に戻ろうと思います。

メモ: Wikipedia
「哲学・思想の一部はソーカルの攻撃からいまだ立ち直れないでいる。」
とあるけど、「立ち直れていない」っていうのは
具体的にどうなっていることを言っているのでしょう?
要するに、「思想を批判されたわけではない」けれど、実質的には
思想そのものが致命的な直撃を受けた、ということ?

「立ち直れた」のは何/誰?

メモ2: これもDistance問題の一つ、と言えるかも。
by kyuco | 2005-11-08 09:22
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