ベルリンは「川のある街」である。なぜかパリのセーヌ、ロンドンのテムズほど有名ではないのだが、シュプレーという名の川が、街なかのイイところを流れている。川が有名でないせいか、「地球の歩き方」にも遊覧船の情報は載っていない。
個人的には、午前中にSバーンで東駅あたりからザヴィニープラッツあたりまで途中下車しながら走りぬけ、午後にシュプレー川の遊覧船でベルリンを一周したりすると、「ベルリン俯瞰」と「ベルリン概観」のほどよく混ざり合った素晴らしい一日ツアーになると思うのだが、ガイドブックでは(遊覧船情報がないくらいだから当然)そんな観光コースを提案するものもない。 一日で全体像がほんわりと把握できる、という意味では、観光客のニーズにぴったりだと言っても過言ではないと思うのだが、どうして取り上げられないのだろう。 「俯瞰」というのはベルリンのテレビ塔のような「もっとも高いところ」にのぼって街を見下ろすことであり、「概観」というのはベルリンのペルガモン博物館のような「主要な」博物館や美術館の「展示」をたとえ10分ずつでも見てまわることである、という認識(思い込み)があるから、だろうか。 * * * 先日、橋梁を中心とする土木構造物の近代化遺産の専門家I先生と一緒に、ベルリンの街を散策する機会に恵まれた。 1日目は、Sバーン(市内鉄道)の高架橋見学。数時間、高架に沿って歩き続けた。明治末期、東京の「新永間市街線高架橋」の建設にあたって、先進各国の鉄道高架橋が比較検討され、ベルリンの高架橋が採用された。それが一体どこまで似せてつくられたのか、というのが1日目のテーマで、先生は煉瓦の積み方やディテイルを丹念にチェックしておられた。 ちなみにこの煉瓦アーチ、東京で採用云々という歴史を知らなくても、ディテイルの差が分からなくても、有楽町辺りの景観を知る者がハッケシャーマルクト付近のSバーン高架沿いを歩けば「ガード下」が髣髴として浮かんでくる、くらいには似ている。 2日目はシュプレー川にかかる橋の見学。3時間、遊覧船に乗っていた。しかしその間まったく飽きることのない「橋の展覧会」であった。(もちろん橋以外にも、右岸に左岸に、ベルリンの「見どころ」が次々と登場する。ので、このツアーを「橋の展覧会」だと認識していたのは、先生と私くらいかも知れない。笑) 高架見学の方はともかく、どう考えても観光客目当ての大きな遊覧船に、私たちをのぞいて日本人(というかアジア人)が一人もいなかったのは、本当に、なんとも不思議なことであった。
by kyuco
| 2005-08-24 21:24
| 景観-風景をキリトル
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